JS22-3:グロムス門およびケカビ亜門菌類に内生するバクテリアの多様性
1東京農工大・連合農学, 2茨城大・農
細胞内共生細菌は、多くの生物群で見出されており、栄養の相互交換のような相利共生関係を維持することにより、互いの生存・繁殖能力を高めていることが知られている。しかし、菌類と細菌の相互関係に関する研究は、どのような菌類に細菌が内生しているのかを探索している段階にあり、相互関係に関する報告は少ない。グロムス門菌類の内生細菌としては、Candidatus Glomeribacter gigasporarum (CaGg)およびMollicutes-related endobacteria (Mre)の2種類が知られている。このうち、CaGgは、宿主菌類の植物共生能に関する重要な機能を持つことが報告されており、細胞内“共生”細菌と考えられる。一方、Mreに関しては、宿主との関係は不明であり、その生態解明に関する研究が国外の研究グループにより進んでいる。ケカビ亜門菌類の内生細菌としては、当研究グループが、Mortierella elongataよりCaGgに近縁な内生細菌を検出したが、その生態は不明である。
ケカビ亜門菌類は、植物共生菌のみから構成されるグロムス門菌類とは対照的に、一部、植物共生菌も存在するが、主に腐生菌からなる分類群である。また、近年、複数遺伝子領域を用いた包括的な系統解析により、ケカビ亜門菌類はグロムス菌類と近縁である可能性が示唆されている。これらのことから菌類における植物共生能獲得の起源を探る上でケカビ亜門菌類は重要な分類群であると考えられる。
演者は、グロムス門菌類内生細菌に近縁な細菌が、ケカビ亜門菌類にも内生し、宿主の環境適応能力(特に植物共生能)に影響を与えているという仮説を立て、まずケカビ亜門菌類における菌類内生細菌の保有状況の探索を行ってきた。これまで、M. elongata以外のMortierella属菌7種よりCaGgに近縁な内生細菌を検出し、多様なMortierella属菌に内生細菌が存在することを明らかにした。また、植物共生菌を含むケカビ亜門菌類5属よりMreを検出し、Mreが広い宿主範囲を持つことを明らかにした。
本発表では、これまでに得られた菌類内生細菌のFISHおよびTEM観察結果についても報告し、さらに検出された菌類内生細菌の系統解析結果が、宿主の系統関係と関連しているのかについても考察する。
keywords:Endofungal bacteria,Glomeromycota,Mucoromycotina,Inter-kingdom interaction