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JS20-1:新型多剤耐性菌の地球規模での蔓延
名古屋大
1940年代のペニシリンの工業的大量生産成功を契機に、様々な有効な抗菌薬が開発実用化され、1980年前後には、「細菌感染症はもはや、克服された病気や過去の病気」と多くの医療関係者が誤認するほどであった。しかし、そのような誤解も長くは続かず、1980年頃より、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が医療現場で広がり始め、また、新たにバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)や基質スペクトル拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌などが相次いで出現した。1990年代になると、多剤耐性結核菌(MDR−TB)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)など、現在世界各地の臨床現場で大きな問題となっている各種の多剤耐性菌が出現し蔓延し始めた。さらに2000年に入ると、幅広い病原細菌に有効性が期待され「切り札的抗菌薬」とみなされているカルバペネム系抗菌薬に耐性を獲得した腸内細菌科細菌(CRE)が出現し、先進国か途上国かを問わず急速に世界各地に拡散、伝播しつつある。今回のミニシンポジウムでは、特にESBL産生菌やCREが途上国や一部の先進国では医療環境のみならず市中環境や自然環境中からも分離され、健常者に対しても感染症の原因となりつつある実態と問題点について紹介する。
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