JS20-2:家畜および野生動物における薬剤耐性菌の分布
岐阜大
人類と生活環境を共有する家畜や伴侶動物などの飼育動物に薬剤耐性菌が分布することが様々な分野で関心を集めている。これには、動物の治療などに使用される抗菌性物質が薬剤耐性菌の分布に大きく影響することが指摘され、畜産物を介して伝播する薬剤耐性菌の汚染源となる家畜における実態調査が、農林水産省により実施されるようになった。2000年頃には国内の家畜から殆ど分離されなかった第3世代セファロスポリン耐性大腸菌は、2005年ごろから肉養鶏から高頻度に分離されて注目されたが、2012年に関係業界が関連する薬剤の使用を自主規制したことにより低減した。現在、家畜における薬剤耐性菌の動向についてのモニタリング耐性が構築されているが、伴侶動物の薬剤耐性菌に関する十分な調査が行われていない状況にある。
近年、シカやイノシシなどの野生動物が増加して、人間の生活圏への侵入により、人身被害や農作物の食害を引き起こすことが社会問題となっている。野生動物の場合、傷病個体の救護を除いて抗菌性物質で治療されることはないが、野生動物においても薬剤耐性菌が分布することが明らかにされている。人間の生活圏へ侵入した野生動物が腸管内に保有する薬剤耐性菌は、排便により環境中へ放出され、身の回りの自然環境を汚染する危険性を孕んでいる。
私たちの身の回りで生活する動物における薬剤耐性菌を制御することは、人類が薬剤耐性菌の暴露するリスクを低減するための大きな課題である。本ミニシンポジウムでは、家畜と野生動物に分布する薬剤耐性菌の動向について紹介する。
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