JS18-3:付加体の地下圏微生物を利用した分散型エネルギー生産システムの創成
1静大・理・地球, 2静大・創造院・環境, 3静大・総合科学・理
東日本大震災の影響で国内の全ての原発が停止している。その影響により日本のエネルギー自給率は6%まで低下した。その後、日本政府は原発を重要なベースロード電源として位置付け、2030年までに原発の電源構成比率を20〜22%まで回復させるとともに、再生可能エネルギーの電源構成比率を22〜24%に引き上げる方針を示した。また、エネルギー自給率を東日本大震災前の20%を上回る25%まで引き上げる計画も示した。現在、新たなエネルギー生産技術の開発が求められている。
我々は、西南日本の太平洋側の地域に分布する“付加体”という厚い堆積層と、その深部地下圏の地下水、メタン、微生物群集に着目し、分散型エネルギー生産システムを考案した。付加体は、プレートテクトニクスによって海洋プレートが陸側プレートの下に沈み込む際、海底堆積物が陸側プレートに付加してできた地質構造体である。西南日本の付加体は、白亜紀から第三紀の海底堆積物に由来しており、高濃度の有機物を含んでいる。また、付加体の深部帯水層には嫌気性地下水とメタンが豊富に含まれている。我々は、西南日本の温泉施設が所有する大深度掘削井にて調査、サンプリングを行い、地下水のイオン分析、付随ガスの組成分析、炭素安定同位体比分析、16S rRNA遺伝子解析、嫌気培養を試みた。その結果、付加体の深部帯水層に含まれるメタンは、微生物によって生成されることが明らかとなった。特に、付加体の堆積層中の有機物を分解してH2とCO2を生成する水素発生型発酵細菌とH2とCO2からメタンを生成する水素資化性メタン生成菌からなる微生物共生体によってメタン生成が起こることが示された。
現在、付加体の深部帯水層から嫌気性地下水を採取するための掘削井とメタンを分離するためのメタン分離槽、ガスエンジン発電機を組み合わせた分散型エネルギー生産システムを構築する計画を進めている。さらに、付加体の嫌気性地下水とそこに含まれる微生物群集を利用して、メタンおよび水素ガスを生成するバイオリアクターの開発も進めている。将来的には、本システムにより地産地消エネルギーを生産する計画である。さらに、本システムは小型ではあるが地下水・ガス・電気を自家的に供給することが可能である。巨大地震や洪水などの災害時に緊急ステーションとして高度利用することも計画中である。
keywords:付加体,地下圏微生物,発酵細菌,メタン生成菌,エネルギー生産