JS6-2:三宅島2000年噴火火山灰堆積地における土壌生成と土壌構造の発達
1筑波大学生命環境系, 2筑波大学大学院生命環境科学研究科
【目的】
三宅島は2000年に大量の火山灰および火山ガスを放出する激しい噴火を起こした。その影響により火口近くでは裸地化した地域が存在している。著者らは2000年噴火火山灰を同一母材とし、噴火後に異なる植生発達をした3地点において、植生および土壌を2007年から継続して、植生と土壌の初期発達過程について研究してきた。本研究では、著者らが2011年に調査を行った3地点における再調査と各地点の表層土壌の微細形態学的特徴の観察を行い、発達段階の異なる地点での短期間での植生と土壌の初期発達過程を解明することを目的とした。
【調査地および方法】
三宅島西部の伊ケ谷地区に位置する、標高および噴火被害度の異なる3地点〔IG7(標高538m・堆積火山灰43cm)、IG8(標高443m・堆積火山灰38cm)、IG9(標高388m・堆積火山灰20cm)〕を研究対象地点とした。各地点とも2000年噴火時の降灰により一時は植被率が0%となった地点であるが、植生は、IG7がパッチ状ハチジョウススキ草原、IG8はハチジョウススキ草原、IG9はオオバヤシャブシ林となっていた。2011年12月に現地にて土壌断面調査を行い、土壌構造の記載を行い、さらに、表層土壌(0−5cm)の微細形態観察を行った。
【結果および考察】
土壌断面調査ではIG7とIG8では大きな変化は見られなかったが、植生が最も発達していたIG9において、表層土壌に団粒構造が見られたことから、2007年には見られなかったA層が形成されたことが確認でき、この4年間で土壌生成が進んでいたことが明らかとなった。IG9のA層で全炭素量・全窒素量・CECが増加し、また、土壌中に遊離している加水分解酵素であるβーグルコシダーゼ活性も高い値を示した。土壌薄片観察から、主たる微細構造は、IG7が亜角塊状構造、IG8が海綿状構造、IG9が軟粒状構造であった。また、IG8とIG9では、植物根やより分解の進んだ有機物が多く確認でき、さらに土壌動物の排泄物が新たに確認されたことからこの4年間に土壌動物が侵入したということがわかった。これらの結果から、火山灰堆積地におけるA層の生成には植生がある程度発達し、その後土壌動物が侵入することが必要であるということが示唆された。
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