JS6-1:三宅島2000年噴火後の遷移に伴う植生発達と遷移初期植物の環境形成
筑波大学 生命環境系
火山噴火の強度が強い場合、陸上生態系は植生系だけでなく土壌系も破壊され、破壊された立地に侵入した生物による環境形成作用がその後の陸上生態系発達の大きな起因となる。また、火山噴出物にはリン等は含まれるが、大気を起源とする窒素は含まれず。窒素が生態系発達の初期制限要因となるとことが指摘されている。本講演では、2000年に大噴火した三宅島の火山灰堆積地において講演者らが行ってきた研究から、植生発達と遷移初期植物の環境形成について紹介する。
植生発達については、衛星リモートセンシングと固定調査区の設置による現地調査を行った。三宅島では、2000年噴火の火山灰の影響とその後の二酸化硫黄ガスの放出により、植生は大きく破壊された。その一方で、火山灰の堆積深が薄い場合、一部の植物は生残し、萌芽や埋没株からの再生により回復した。15年経過した現在、三宅島の噴火被害地では遷移初期植物のハチジョウススキとオオバヤシャブシ、遷移後期種である常緑広葉樹のヒサカキとタブノキが混生する景観が広がる。経年的な毎木調査から、常緑広葉樹2種の多くは、生残した萌芽幹から再生したことが確認された。一方、火山灰の堆積が厚い場合、遷移初期植物が新たに侵入することで植生回復が始まり、ハチジョウススキ、オオバヤシャブシ、ハチジョウイタドリ、ユノミネシダが優占する群落が形成されている。
遷移初期植物の窒素の獲得特性と環境形成作用については、窒素固定植物であるオオバヤシャブシとC4植物のハチジョウススキの2種に着目した。2000年噴火の火山灰堆積により裸地化した地域(島北西部の中腹)において、それぞれの種が形成するパッチ下において植物種数、土壌中の炭素・窒素含量、分解者である陸生大型ミミズの密度等を比較した。その結果、生態系発達に対するオオバヤシャブシの正の効果が確認され、本種のパッチ下では窒素制限の緩和作用が機能していることが示された。また、リンについては両種とも葉中のリン濃度は高く、リン制限は弱いことが示唆された。このように窒素制限の緩和が生態系発達を促すことが認められる一方で、土壌生成への効果については発達した地下部を形成するハチジョウススキの影響も強い可能性も考えられた。
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