JS7-1:中高温下の統合型微生物学:山口大学中高温微生物研究センターの取り組み
1山口大学農学部, 2山口大学中高温微生物研究センター
地球規模での大規模な気候変動や人口増加・大規模開発に伴って,エネルギー枯渇・電力危機,環境保全・生態系の維持,感染症対策の必要性など多くの課題が,我が国を始め,特に熱帯地域を抱える東南アジアに突きつけられています。これらの課題を解決するために,ヒト生活圏に生息し,温暖化に伴う地球規模での温度上昇と密接に関係して,「耐熱性」や「微好熱性」を有するいわゆる「中高温」微生物の有効活用や,それらの微生物に対する制御や対処に関する研究が,今まさに必要とされています。山口大学では,発酵・環境・病原3部門すべての微生物学分野で活躍する研究者集団を組織し, 統合型の「中高温微生物学」研究を展開しています。
常温菌でありながら,同属同種の他菌種よりも5-10_C高温で生育可能な「耐熱性」を示す発酵微生物,さらには自然環境下の比較的高温域に生息する「微好熱性環境微生物」,温暖化に伴い生息域が温帯地域に拡大をみせる病原微生物など,様々な「中高温」微生物が対象となっています。これらの中高温微生物の統合的な研究を通して,気候変動に連動した環境変化に対応するストレス耐性獲得の「微生物の適応戦略」の解明,低炭素化社会の実現に貢献する「高温微生物発酵系」の開発,熱帯地域に有用な「バイオマス利用・新規バイオエネルギー生産系」の開発,熱帯地域で拡大する「感染症の拡大・伝播に対処する診断・予防法」の確立等の研究を展開しています。
私達は,将来的に,国内微生物産業・医薬系企業との連携を進めるとともに,東南アジアを中心とした熱帯地域での新規微生物産業の構築や微生物防除システムの確立などを通じて,特に地球規模の気候変動に対処する微生物分野での技術革新を具現化し,中高温微生物学の研究力強化とそれに基づく社会への貢献を目指しています。
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