JS18-1:地下環境におけるCO2の再利用を目指した電気化学的微生物メタン変換システムの構築
1国際石油開発帝石(株), 2東京大学
本研究においては、CO2排出が主因と考えられる地球温暖化問題、さらには化石燃料をベースとしたエネルギー資源枯渇問題を解決する手段としてCCSにより地下に隔離されたCO2を微生物反応によりメタンに変換し、有用資源である天然ガスとして再利用する技術の構築を目指している。
電気化学的微生物メタン生成の反応プロセスにおいては、地下に常在している水素資化性メタン生成菌がCO2をメタンに変換する際に、水素分子を直接利用する代わりに油層水等をソースとするプロトン(H+)および反応系に印加された電流から得られる電子を利用することを想定している。当該評価実験に利用した電気化学的メタン生成装置は小容量のガラス瓶を使い、カーボンクロスをアノード、カソード電極として設置し、電極間にはセパレータを設けている。ガラス瓶内には秋田県八橋油田坑井から嫌気条件で採取したメタン生成菌等の古細菌群ならびに各種細菌群の存在が確認されている油層水を培養液として添加し、ヘッドスペースガスには80%窒素20%CO2の混合ガスを封入し55℃で嫌気培養を行った。系内に直流電源により電極に0.75ボルトの電圧を加えた場合と、同じ系で電圧を加えない場合のメタン生成状況を観測した。
その結果、電圧非印加実験においてはメタンの生成は見られず、一方、電圧印加したケースでは、ほぼ定レートのメタン生成がみられており、生成速度は386mmol/day.m2と算定された。また、電流-メタン変換効率もほぼ100%と高い値を示した。
さらに、当該メタン生成反応に関与している微生物を調査すべく、当該試験のカソード電極に付着している微生物群を調査した結果、古細菌は水素資化性メタン生成菌、細菌は電子放出菌が優占化していた。
当該技術を実油田等で実施する場合には、坑井を掘削し、地下に電極を設置する必要がある。さらには圧入CO2が、地下の油層水に溶解したうえで、設置した電極と効率よく接触する必要があり、当該接触効率を高めるためにも、水平掘削と、水平電極部をできるだけ長くする必要がある、現状では、油ガス田の掘削仕上げを想定し、直径約20cmの電極坑井を水平長さ約1000m掘削したうえで仕上げることを想定している。この場合、カソード、アノードは同心円状に配置した構造とし、またカソード表面に微生物が吸着しやすい材質を選定する必要がある。
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