JS15-2:富栄養・貧栄養連続培養系における鉄制限Microcystis aeruginosa細胞特性と増殖応答
東京工業大学
鉄制限の連続培養系において淡水性ラン藻類Microcystis aeruginosaを培養し、細胞増殖、鉄細胞内含量、鉄摂取速度などの細胞応答を調べた。特に本研究では、鉄以外の栄養塩状態の影響も評価するため、富栄養・貧栄養条件における培養を行った。具体的には、鉄以外の栄養塩が十分に存在し最適増殖が可能なFraquil(富栄養Fraquil)、ならびに鉄以外の栄養塩も増殖を制限するFraquil(貧栄養Fraquil、特に硝酸やモリブデンが低い)の栄養塩濃度が異なる二つの淡水培地を用いた。両培地において、鉄細胞内含量は希釈率とともに増加し、Droop理論と一致した。富栄養Fraquilと比較して、貧栄養Fraquilにおける鉄細胞内含量は小さかったことから、貧栄養状態における細胞の鉄要求量は低いことが示唆された。鉄摂取試験から、富栄養状態で培養された細胞は、最大鉄摂取速度を増加させることで鉄制限に対応すること、すなわちネガティブフィードバック制御であることが明らかとなった。対照的に、貧栄養状態では、鉄制限度合が上昇すると最大鉄摂取速度は減少し、非ネガティブフィードバック制御を示した。この非ネガティブフィードバック制御は、貧栄養状態での低い鉄要求量と関連していることが示唆された(例えば、貧栄養状態で細胞内硝酸還元活性は低い等)。鉄摂取における半飽和定数や細胞サイズは、鉄制限とは無関係であった。以上の結果は、鉄制限Microcystis aeruginosaの細胞応答は鉄以外の栄養塩(共制限)にも大きく影響を受けることを示している。
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