JS15-3:比較機能解析によるシアノバクテリアの環境適応機構の解明
首都大・生命
酸素発生型の光合成を行うシアノバクテリアは、光と水、そしてわずかな無機物によって生育することが可能である。そのため、光を利用できるほぼ全ての環境で見られ、その棲息域は海や湖沼、温泉などの水圏から、砂漠などの陸域にまで拡がっている。シアノバクテリアは、非常に多様な環境因子の変化に対して適応することができる驚くべき能力を持っている。シアノバクテリアの環境適応機構に関する研究は、この20年、ポストゲノム解析により飛躍的に進展した。Synechocystis sp. PCC 6803などのモデルシアノバクテリアを用いて、環境変化の感知とそのシグナルの伝達、そして遺伝子発現調節といった一連の環境適応の分子メカニズムが明らかにされてきた。しかし、それらの環境応答機構が、生理的特徴や棲息環境の大きく異なるモデル株以外のシアノバクテリアにおいても機能しているのかは明らかではない。我々は生理的、系統的に異なる複数のシアノバクテリアを用いて、その環境適応機構の比較解析を行っている。それぞれの株がとる環境適応戦略が、その生理的特徴や棲息環境の物理化学的特性とどのような関係にあるのかを明らかにし、シアノバクテリアの環境適応戦略の全容解明を目指す。本発表では、シアノバクテリアの生育を制限する最大の環境要因の一つである窒素環境への適応機構について報告する。
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