PI-154 (JTK):炭素飢餓および光照射条件は紅色光合成細菌Rhodopseudomonas palustrisの浸透圧ストレス抵抗性を上昇させる
首都大学東京大学院理工学研究科生命科学専攻
炭素源の枯渇によって飢餓状態になると、高温や高浸透圧、酸などのストレスに対する抵抗性が上昇することが、病原細菌や土壌細菌で報告されている。このような飢餓によるストレス抵抗性の上昇は、自然環境中で微生物が生残性を維持するのに重要な機構のひとつだと考えられる。我々はこれまでの研究で、光合成細菌が炭素源飢餓条件でも光照射があれば、長期間、高い生存率を維持することを報告しており、光エネルギーが飢餓生残に有効であることを示している1)。本研究では、土壌や水圏に広く分布する紅色光合成細菌を対象に、飢餓によるストレス抵抗性の変化に対する光照射の影響を明らかにすることを目的とした。
紅色光合成細菌Rhodopseudomonas palustris CGA009を嫌気・光照射条件で有機物濃度を制限した培地(コハク酸-Na 0.05%)を用いて培養し、炭素源の枯渇により指数増殖期で増殖を停止させた。この飢餓細胞の懸濁液を明所または暗所に1〜5日間置いた。これらの細胞について、ストレスの有無による生菌数の違いをコロニー形成数で評価し、生残率を求めた。高浸透圧ストレスとして2.5 M NaCl 60分の処理の影響を検討した。高浸透圧ストレスを受けた増殖期の細胞の生菌数は、ストレスなしの生菌数の4%であったが、飢餓になってから明所で1日経過した細胞は43%と高いストレス抵抗性を示した、ただし飢餓によって増殖が停止してすぐの細胞は、ストレス抵抗性の上昇は見られていない。飢餓5日経った細胞では、68%と飢餓1日目の細胞と変わらず高い生残率を示していた。一方、増殖が停止してから暗所に移した細胞ではストレス抵抗性の上昇が見られなかった。
以上から、炭素源の枯渇に対して、紅色光合成細菌は高浸透圧ストレスに対する抵抗性を上昇させるが、この飢餓適応には光照射条件が必要であることが示唆された。光から獲得したエネルギーは、膜組成・細胞内成分の変化や物質の輸送に利用していると予想される。
1) Kanno et al. Microbes Environ. Vol. 29, No. 3, 326-328, 2014
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