JS18-4:深地層研究施設を利用した深部堆積岩および花崗岩における微生物生態学的研究
日本原子力研究開発機構
日本原子力研究開発機構では、岐阜県瑞浪市と北海道幌延町に深部地下研究施設(瑞浪URLおよび幌延URL)を建設し、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の基盤となる研究開発を実施している。その一環として、我々は花崗岩を対象とした瑞浪URLおよび堆積岩を対象とした幌延URLの様々な深度から地下水試料を採取して、深部地下に生息する微生物群集分布と現存量に関する調査研究を進めてきた。その結果、現存量や微生物サイズ分布の岩層への依存性を確認するとともに、16S rRNA遺伝子のクローンライブラリー解析や次世代シーケンス解析の結果から、その多くが未培養系統群に属する新規の微生物群集により構成されていることを明らかにしてきた。また、各種の代謝機能遺伝子の定量PCR解析や周辺の地球化学分析により、地下環境における微生物の代謝機能に関する評価も実施した。北海道北部の幌延地域に建設されている幌延URL周辺は、新第三紀中新世〜鮮新世の堆積岩である珪藻質泥岩および珪質泥岩が広く分布しており、その地下水中には高濃度のメタンおよびCO2が溶存するとともに、H2およびCO2を基質とするメタン生成菌が優先して存在することが明らかにされてきた。一方で、瑞浪URL周辺は、上部に瑞浪層群を胚胎する土岐花崗岩が基盤となっており、その周辺には東濃ウラン鉱床が分布する。瑞浪URL周辺の微生物群集は、幌延サイトと比較すると現存量、サイズとも1オーダー以上も小さく、その群集組成も堆積岩系の幌延サイトとは全く異なるものであることが明らかになった。本講演では、日本における2ヶ所の地下施設とその周辺のボーリング孔を利用した微生物学的調査に基づいて集積された微生物生態学的特性について紹介しつつ、地球化学特性データをもとに原位置環境で起こっている微生物の代謝活性について議論を展開する。
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