PA-020:低濃度アンモニウム供給Down-flow Hanging Spongeリアクターにおける硝化特性の解析
1静大院・工, 2静大・工
富栄養化汽水湖の水質浄化を図る一環として、生態系の活用による浄化能力の強化は有効な手立ての一つと考えられる。静岡県浜松市に位置する佐鳴湖は全国でも有数の富栄養化汽水湖であり、これまで窒素循環に関わる微生物生態系の解析を実施してきた。その結果、底泥表層において脱窒および硝化微生物群が最も高密度で生息していることが示されまた興味深いことに佐鳴湖では硝化アーキア(AOA)が優占していた。そこで本研究では佐鳴湖における硝化を把握する一環として、硝化微生物の分離に向けた硝化リアクターの構築を目的とした。
NH4+-N濃度が0.1 mMおよび0.4 mMとした培地に佐鳴湖底泥表層土を5%(w/v)添加し支持体(ポリウレタンスポンジ)を浸漬し通気条件下で回文培養した。NH4+-Nが完全に消費されたことを確認後、新たに同濃度となるようにNH4+-Nを添加した。本操作を5回繰り返した後、支持体10個を連結しNH4+-N濃度が0.1 mMおよび0.4 mMを含む培地を1 L d-1で連続供給し、それぞれリアクターDHS-0.1およびDHS-0.4を構築した。DHS-0.1ではアンモニア、亜硝酸および硝酸が断続的に検出された一方、DHS-0.4では硝化の順に検出され、両リアクターでは硝化特性が異なっていた。amoAを標的としたreal-time PCRを実施した結果、両リアクターともAOAおよび硝化細菌がそれぞれ109~1010および105~106 copies mm3 sponge集積していることが確認された。大変興味深い事に、リアクター排液中にアンモニウムが検出された時期に、AOAの減少とAOBの増加傾向が観察され、AOAとAOBの棲み分け機構に極低濃度NH4+-Nの関与が示唆された。実際の佐鳴湖同様、AOAが優占する硝化リアクターの構築に成功した。今後、微生物群集構造の解析ならびに硝化微生物の分離を実施し、佐鳴湖における硝化機構の解明を図る予定である。
keywords:硝化,Down-flow Hanging spongeリアクター,富栄養化汽水湖,窒素循環,硝化アーキア