JS14-3:未利用エネルギー資源開発への地圏微生物学の挑戦
1産総研・地圏資源, 2産総研・生物プロセス, 3INPEX
天然ガス資源としてのメタンは人類にとって「良いメタン」である。そのような良いメタンは油田やガス田、炭田、海底下メタンハイドレートなど地下に広く分布しており、そのうちの大部分は地下の(堆積)有機物が地熱によって分解され生成する熱分解起源のメタンとされる。一方で、堆積有機物の微生物分解によって生成した微生物起源のメタンは可採天然ガス資源量の20%以上を占める。現存する微生物起源のメタンは数百万年という地質学的なタイムスケールで生成・蓄積したものであり、その微生物活動は今もなお存続している。それはすなわち、微生物が利用可能な有機物が地下になおも残存していることを意味しており、人為的な有機物分解の増進によって、新たな天然ガス資源の創成が可能であることを示している。従って、地下生物圏で起こるメタン生成メカニズムを理解することは地球の炭素循環の理解のみならず、天然ガス資源の分布や形成を把握すると共に新たなエネルギー資源創成の技術開発へと繋がる地圏微生物学の大いなる挑戦である。
地下生物圏のメタン生成メカニズムを理解することは、地下の物理化学的環境条件や有機物の種類、微生物コミュニティー、代謝経路を明らかにすることである。しかし、近年飛躍的に進歩した分子生物学的分析技術をもってしてもその全容はベールに包まれている。全容解明を困難にする技術的障害は希少サンプルの非汚染取得法や低濃度バイオマスなどが挙げられる。本発表ではこれらの障害を地下の現場環境を再現する培養技術によって克服し、地下1,000メートルの深部地下油層環境のメタン生成メカニズムの解明に挑戦する研究を紹介する。
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2015/10/22修正
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