JS11-1:国際宇宙ステーション「きぼう」船内における環境微生物学的研究
大阪大学 大学院薬学研究科
【目的】微生物は我々の生活や健康と密接に関わっている。また微生物はあらゆる環境に生息し、宇宙居住においても例外ではない。微小重力下では免疫能が低下し、一部の細菌のビルレンスが高くなるという報告もあり、宇宙環境においては地上以上にヒトと微生物との関係に関する研究が重要となる。そこで当研究室では宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で2009年から国際宇宙ステーション「きぼう」における細菌モニタリングを進めている。今回は「きぼう」運用開始後から4年間における細菌群集構造の変化について報告する。
【方法】「きぼう」内の被検面として、細胞培養装置の表面および内側、手すり、空調機送風部および吸気部を選んだ。試料採取は2009年9月、2011年2月、2012年9月に宇宙飛行士により行われた。試料中の細菌数は直接計数法および16S rRNA遺伝子を標的とした定量的PCR法により、細菌群集構造は16S rRNA遺伝子を標的としたpyrosequenceにより解析した。
【結果および考察】すべての被検面において、細菌現存量は定量限界付近(102〜103 cells/cm2)であった。これらの結果から、「きぼう」は衛生微生物学的に適切に管理されていることが分かった。また、16S rRNA遺伝子を標的とした解析によりFirmicutes、γ-proeobacteriaが優占し、特にStaphylococcus属、Enterobacteriaceaeが多くの割合を占めていた。このことから機器表面にはヒトの常在細菌が存在しており、これらは宇宙飛行士から各機器等の表面に移行したものと考えられた。今後も継続してモニタリングすることにより、宇宙居住環境での長期滞在にともなう微生物の定着様式が明らかになるものと考えられる。
*本研究はJAXAおよび日本宇宙フォーラムとの共同で実施した。
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