JS14-1:Candidatus Methanogranum caenicola: 未培養系統群Group E2に属する新規メタン生成アーキアの発見
理研BRC-JCM
近年まで、Thermoplasmata綱は好気性の好酸性硫酸塩還元菌のみで構成されると考えられてきた。それらは酸性環境や温泉環境といった極限環境に棲息するが、群集構造解析などにより、動物腸管や嫌気発酵槽など様々な環境にもThermoplasmata綱に属するアーキアが棲息し、巨大な系統群を構成することが徐々に明らかとなってきた。しかし、それらアーキアがどのような性状を有し、生態的役割を果たしているか全く不明である。そこで、メタン発酵リアクターからThermoplasmata綱の未培養系統群に属する新規アーキアを培養することを目的とした。
2004年12月16日に、メタン発酵リアクターから発酵液を収集した。本試料をメタノールと酵母エキスを含む液体培地に接種し、30_C にて嫌気的に集積培養を行った。集積培養を数回繰り返した後、16S rRNA遺伝子とmcrA遺伝子のクローン解析を行った。その結果、集積培養液中に新規アーキア (Kjm51a株) の増殖を確認した。本集積培養物は細菌が混在するものの、Kjm51a株はアーキアレベルで単一であった。16S rRNA遺伝子に基づく系統解析を行った結果、Kjm51a株はThermoplasmata綱の未培養系統群Group E2に含まれた。近縁の培養株はMethanomassiliicoccus luminyensis B10Tであったが、相同性は87.7%であり、属レベルで新規であると考えられた。Kjm51a株特異的プライマーなどを用いて培養液のFISH解析を行なった結果、Kjm51a株は球菌であることが明らかとなった。Kjm51a株は増殖にメタノールと酵母エキスを必須に要求し、集積培養物の気層中から水素とメタンがガスクロマトグラフィー分析で検出された。2-ブロモエタンスルホン酸の添加によってKjm51a株の増殖とメタン生成が阻害され、水素量が増加した。これは、細菌が生成した水素をKjm51a株が利用したことを意味する。これらのことから、Kjm51a株はメタノール還元型の水素資化性メタン生成アーキアであると考えられた。以上の結果から、集積培養したKjm51a株に対しCandidatus Methanogranum caenicolaを提唱した。
keywords:メタン生成アーキア,Candidatus Methanogranum caenicola,Thermoplasmata綱,メタン発酵リアクター