JS13-1:共生微生物の多様性情報を活用したテンサイからの有用細菌の効率的な選抜
1農研機構・北農研, 2東北大院生命, 3帯広畜産大
植物の根圏に生息し、作物の生育促進をもたらす細菌(PGPR: Plant Growth-Promoting Rhizobacteria)の研究およびそれらを活用した微生物資材の開発は、化学肥料削減を目的に古くから取り組まれてきたが、多くの微生物資材は圃場における施用効果が不安定であることが問題とされてきた。
我々の研究グループは、接種したPGPRが多様な農業環境で安定した効果を得るには、対象作物に定着しやすいこと(親和性)が重要であると考え、共生微生物叢の解析を進めることにした。三要素試験区で栽培したテンサイの共生微生物叢をクローンライブラリー法により解析した結果、主根にはAlphaproteobacteria綱、特にRhizobiales目の細菌が多く分布し、肥料条件が悪くなるにつれてその存在割合が増加することを明らかにした。Alphaproteobacteria綱にはPGPRとして多くの種が報告されていることから、テンサイのPGPR選抜において重要なグループであると考えられた。一方で、PGPR選抜のための細菌コレクションの構築を目的に、テンサイの様々な部位や複数の培地を使用し、約2,500菌株を分離した。同一グループ菌株の接種試験の重複を回避するため、分離菌の16S rRNA遺伝子の配列情報を元に種レベルでのクラスタリング解析をした結果、分離菌株は約270個のOTUに分類された。系統解析の結果、およそ半数がAlphaproteobacteria綱に属し、属レベルではRhizobium属が最も多く分離された。共生微生物叢の情報を元に、テンサイ根圏に安定して存在していると推定される69菌株の接種試験を実施した結果、PGPRとして17菌株を効率よく選抜することに成功した。このうち8菌株はAlphaproteobacteria綱に属し、他作物も含めて初めて植物生育促進効果が報告された新規の菌群も含まれていた。以上より、共生微生物叢の情報とクラスタリング解析を活用した手法は、PGPRの効率的な選抜が行えるだけでなく、未知のPGPRを選抜する可能性を高めることが示唆され、今後のPGPR研究の発展に貢献すると考えられた。
本成果は農林水産省の「気候変動プロ」(2011〜2013年度)および「農食事業(26065B)」(2014年度〜)で得られた成果である。
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