JS13-2:有用細菌の植物組織局在性から見た接種法の提案
帯畜大・食品科学
有用な微生物群が植物を健康に育むという視点は、安全安心で持続的な農作物生産を考える上で重要である。しかし、接種菌が植物に定着せず期待する効果が得られない問題があった。そこで、十勝の代表作物(バレイショ、テンサイ)から菌叢解析による定着性の情報と植物接種試験の結果から選抜した有用細菌を標識・可視化し、植物組織局在性と生理・生化学的特性に基づいて効果的・安定的な接種法を検討した。
レポーター遺伝子の導入や細胞染色法の最適化により、バレイショ有用細菌4株(Alphaproteobacteria T168株、Betaproteobacteria R182株、Actinobacteria R170株、R181株)を植物体組織と識別する方法を確立した。バレイショにおける組織局在性を調べた結果、菌株により局在性が異なっており、T168株は主に側根基部、R182株は主に根毛、R170とR181株は根全体に局在して感染を拡大することを明らかにした。更に、4菌株間の増殖拮抗の解析及び2菌株の混合接種によるバレイショの初期生育に与える影響を調べた。その結果、植物組織局在性が異なり増殖拮抗しない(共存できる)組み合わせでは生育が効果的に促進されるが、拮抗する(共存できない)組み合わせでは生育促進効果がないことを明らかにした。一方、これら4菌株は、インドール酢酸とシデロフォア生成能、バイオフィルム形成能を示した。また、全ての菌株はβ-1,3グルカナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ活性も示したが、リパーゼ活性は1菌株でのみ確認された。
以上の結果から、植物組織局在性が異なり、増殖拮抗が起こらない組み合わせの混合接種により、植物への定着性や接種効果に優れ、植物病害の防除や環境ストレス下でも効果が期待できる有用な微生物資材化の可能性が示唆された。
本成果は農林水産省の「気候変動プロ」(2011〜2013年度)および「農食事業(26065B)」(2014年度〜)で得られた成果である。
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