PH-122:メタゲノム解析による生理・代謝機能ポテンシャルから見た富栄養湖沼(北浦)の窒素循環像
1中央大大学院・理工, 2JAMSTEC, 3九大院・医, 4鳥取環境大
【目的】茨城県・北浦で嫌気性アンモニア酸化(anammox)活性が高いが脱窒活性が低い(KU3) 地点が見出された。KU3地点から採取した堆積物のメタゲノム配列情報から、特にanammox、脱窒、硝化などの窒素循環に関与するKEGG機能モジュールの充足率から判断された代謝能と実測された活性との関連性を検討した。さらに、KU3地点の特徴を明確にするため、anammox活性が低いが脱窒能が高い2地点(KU4、KU6地点)との比較機能メタゲノム解析を行った。
【方法】MAPLEシステムを用い、上記3地点から得たメタゲノム配列から、各KEGGモジュールの充足率を計算した。Anammoxのゲノム配列はKEGGに登録がないので、KEGGモジュールのリボゾームにアサインされた全遺伝子をnr-ntに対して再度BLAST検索を行い、anammox微生物(Ca.KueneniaとKSU-1菌株)にbest-hitした配列数を基にanammox微生物の割合を推定し、population当りのanammox活性を算出した。また、脱窒や硝化モジュールのabundanceと活性との相関を調べた。
【結果】anammox微生物の存在比は、KU3地点で0.31%と最も高く、KU4、KU6で0.17%、0.09%とanammox活性とpopulationの間に高い相関が見られた。Anammox populationあたりの活性はKU3で高く、KU6の6.5倍であった。一方、脱窒菌の存在比はKU3、KU4、KU6で3.4%、4.3%、3.8%と有意な差が見られず、脱窒活性と脱窒菌のpopulationの間には相関がなかった。また、脱窒菌が帰属するGammaproteobacteriaおよびBetaproteobacteriaの合計がKU4、KU6で、50.7%、39.5%であるのに対し、KU3では9.8%と明らかに低かった。硝化菌の存在比は3地点で優位な差が見られず,硝化活性の実測値と一致していた。また、窒素固定菌の存在比は地点間で差がなかった。このように,KU3はanammox微生物の存在比以外にも他の地点とは異なる特徴があることがわかった。窒素以外の物質循環能についても同様な検討を行ったので、その結果を含めて報告する。
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