OH-05:MAPLE Ver.2.1による生理・代謝機能ポテンシャルの比較メタゲノム解析
1JAMSTEC・資源, 2三菱総研・人間, 3京大・化研, 4九工大
我々は、微生物生態系が持つ機能ポテンシャルの解明を目的として、メタゲノム配列から生理・代謝機能を評価するシステムMAPLE(Metabolic And Physiological PotentiaL Evaluator)を開発し、公開中である(http://www.genome.jp/tools/maple/)。MAPLEはKEGGデータベースを基盤として、微生物コミュニティーの持つ生理・代謝機能ポテンシャルの評価と、それを担う生物種の構成の推定を行うツールである。従来のMAPLEでは微生物コミュニティー全体として機能する生理・代謝ポテンシャルと、それを担う生物種の評価が中心であったのに対し、MAPLE Ver.2.1では、
- 微生物コミュニティー全体だけなく個別生物分類群ごとの充足率(MCR)の算出
- 各機能モジュールのアバンダンス(存在度)に基づく機能の頑強性の推定
- 不完全なモジュールのポテンシャルを評価する統計的な指標(Q値)の導入
以上の3機能を新たに追加した。これにより環境中で各機能を担う生物の構成を含め、より詳細かつ精度の高い評価が可能となり、単に機能ポテンシャルの有無だけでなく、その環境が持つ機能の頑強性やそれを担う生物種の多様性評価も可能となった。
今回、我々はMAPLE Ver.2.1の有用性を確認するため、Global Ocean Sampling project から公開されているサルガッソー海域及びガラパゴス諸島周辺海域の海洋メタゲノム配列(各サンプルおよそ120万リード)を用いて比較機能解析を行った。まず、リボソームタンパクを用いた群集構造解析では、地理的に比較的近い海域間でもその菌叢には有意な差異が認められた。特にガラパゴス周辺海域では、”Bacteroidetes”の占める割合がサルガッソー海域に比べ高く、アーキアの占める割合が低いなどの特徴が確認された。また、生理・代機機能ポテンシャルについても、硫酸還元やトランスポータに関わるモジュールなど、幾つかの機能に関してMCRやアバンダンスに差異が認められた。なお、これら機能に寄与する生物種組成については現在解析中なので、MAPLE Ver.2.1の新機能の紹介を含めてその詳細を報告する。
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