JS13-3:バレイショ・テンサイ有用細菌の野菜類に対する接種効果
1農研機構近中四農研, 2農研機構北農研, 3長崎農林技開セ, 4鹿児島農総セ
【背景・目的】
2011年~2013年度にかけて実施した気候変動プロB6系において、バレイショ、テンサイに生育促進効果を有する複数種の有用細菌を選抜した。2014年度から実施している農食事業(26065B)では、有用細菌の接種効果の向上を図るとともに、他の野菜類への適用範囲の拡大を試みている。
【方法および結果】
(1) バレイショに対するバレイショ有用細菌の接種効果(長崎県)
バレイショにおける有機物資材の施用と根圏微生物相の解析結果から、バレイショの生育時に米ぬかを施用すると根圏土壌の細菌群集に変化が生じ、放線菌類などのグラム陽性細菌の割合が増加することを明らかにした。そこで、バレイショ有用細菌の圃場試験において、接種菌が増殖しやすいように米ぬかを同時に施用した結果、細菌無接種・米ぬか無施用区と比較して収量の向上が認められた。
(2)ホウレンソウに対するテンサイ有用細菌の接種効果(近中四農研)
テンサイ由来の有用細菌について、ホウレンソウ苗への接種効果を温室・ポット試験で評価した結果、多くの菌株がホウレンソウでも生育促進効果を示すことを明らかにしている。そこで、ポット試験で効果が見られた菌株について圃場試験を実施した結果、接種により増収傾向がみられた菌株など、2菌株を選抜した。また、ホウレンソウの重要病害である萎凋病(Fusarium oxysporum)を対象にテンサイ由来の有用細菌の病害抑制効果を評価する実験系を確立して調査を行ったところ、複数の菌株の接種により発病指数の低下や発病の遅延効果が認められた。
(3)カボチャに対するテンサイ有用細菌の接種効果(鹿児島県)
テンサイ由来の有用細菌の野菜類への適用範囲の拡大を目的に、カボチャへの接種試験を実施した。室内・ポット栽培により、テンサイ由来の有用細菌接種効果を評価した結果、3菌株で実生への生育促進効果が確認された。また、圃場試験の結果、3菌株で果実重の増加傾向が認められた。現在、ゴボウやトマトに対する接種試験を実施中であり、ゴボウについては生育促進効果を示す菌株が1菌株、認められている。
各作物で圃場試験での接種効果が認められた菌株については、慣行施肥量に対し2~5割の減肥条件下での圃場試験により、接種による減肥の可能性について検証中である。
なお、本成果は農林水産省の「気候変動プロ B6系」(2011~2013年度)および「農食研究事業(26065B)」(2014年度~)で得られた成果である。
keywords:有用細菌,生育促進効果,病害抑制効果
2015/10/22修正