JS7-3:細胞内共生の成立機構の解明と宿主細胞の環境適応力の増強
山口大・院理工、AMED-NBRPゾウリムシ、山口大・中高温微生研
ミトコンドリアや葉緑体の獲得に貢献した細胞内共生は現在も繰り返して行われ、新たな細胞構造と機能の獲得による真核細胞の進化の原動力となっている。その成立過程を解明するには、宿主と細胞内共生生物とを一時的に分けて維持し、その後,両者を混合して細胞内共生を同調して誘導し、経時的変化を追跡できる実験系が必要になる。しかし、大部分の細胞内共生系では、宿主か細胞内共生生物の一方または両方がパートナーの存在なしでは生存不能なほどに一体化が進行しており、多数の細胞に細胞内共生を同調して誘導可能な材料の探索は困難を極めた。幸い、我々は活発な食細胞活動を持つゾウリムシ属が細胞内共生の同調的誘導を可能にすることを見いだし、ゾウリムシとその共生細菌ホロスポラを用いた「真核細胞と原核細胞の細胞内共生」と、ミドリゾウリムシとその共生クロレラを用いた「真核細胞どうしの細胞内共生」を誘導する最適条件を確立した。独立して生存可能な宿主細胞内に外来性の生物が侵入し、安定して維持されるためには、共生生物は、(a)宿主リソソームによる消化の回避、(b)宿主細胞内の特定場所への移動、(c)宿主細胞と同調した増殖、(d)宿主娘細胞や子孫への確実な伝搬、(e)宿主の生存能力増強の機能をはたせなければならない。これらに関して得られた結果を紹介する。特に、(e)では宿主は新たな能力(高温・低温耐性、各種金属イオン耐性、飢餓耐性、低酸素耐性、光合成産物の利用など)を獲得して生存能力を増強し、生存に不適な環境にも棲息範囲を拡大できるようになることが分かった。
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