JS19-2:インドネシア海岸環境からのアクチノバクテリアの分離と分類学的多様性
製品評価技術基盤機構
放線菌は、細菌の一分類群でありながら糸状菌に似た複雑な形態的特徴を有し、抗生物質等の多くの生理活性物質生産菌が存在する有用菌群として知られている。一方、現在のリボソーム遺伝子塩基配列に基づく系統関係を中心とした分類においては、放線菌に含まれるにも関わらず菌糸状の形態を示さないものも数多く存在し、これらはアクチノバクテリアと呼ばれることが多い。アクチノバクテリアには有用酵素やアミノ酸、ビタミン等の生産菌や難分解性物質分解菌などが数多く含まれるため、産業上有用な菌群として扱われている。そのため、新規性の高いアクチノバクテリア菌株を分離・収集することは有用機能の探索においても重要であるが、アクチノバクテリアの選択分離法はほとんど開発されておらず、効率的に菌株を得ることが難しいことから、分類学的、生態学的多様性の解明が遅れているのが現状である。演者はこれまでに、アクチノバクテリアの選択分離法の構築を行い、実際に房総半島沿岸や西表島等の国内海岸環境で採集した海洋堆積物や海砂、マングローブ土壌などの試料から分離を行うことで、効率的にアクチノバクテリア菌株が得られることを立証してきた。
本講演では、2013〜2014年にインドネシア(バリ島およびジャカルタ周辺の3つの小島)の海岸環境にて採集した海洋堆積物やマングローブ土壌など計39試料から350株のアクチノバクテリアを分離した結果について紹介するとともに、得られた分離株の分類学的多様性について、国内試料由来の分離株との間で比較を行い、インドネシアのアクチノバクテリアの多様性と新規アクチノバクテリアの探索源としての有用性について考察する。また、インドネシアの海岸環境から分離された新規性の高いアクチノバクテリア7株について詳細な分類学的研究を行った結果、これらは2新属6新種となることが示唆された。本講演では、これらの分類学的研究の結果についても概説する。
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