JS17-2:ミクロエコミクス (micro-ecomics) 研究を支える数理
東京大学大学院医学系研究科
微生物生態群集では、メタゲノムや COG (Cluster of Orthologous Genes) 解析によって、群集における種構成や群集が有する機能に関する情報を得られるようになってきた。一方、窒素循環など微生物群集によって担われている生態系機能(サービス)は、必ずしもオミックスデータのみから理解できるわけではない。生態学的相互作用によって生み出される群集の維持機構やサービスは、これまでに生態学の分野で発展してきた理論や数理モデルが有効であると期待される。
本講演では、古くから個体群生態学の分野で培われてきた数理モデルを用いた研究のレビューを行う。閉鎖実験系やケモスタットのような連続培養系 (ケモスタット) における微生物個体群動態の数理モデルから出発し、個体群数理モデルの基礎を紹介する。続けて、長期培養系における大腸菌やバクテリアの進化実験研究と対応する数理研究について紹介する。最後に、オミックスデータを元に微生物群集の種構成や群集機能を同定するインフォマティクス研究に加えて、数理モデルを用いた生態系機能を探る融合研究の新しい方向性について議論する。
keywords:個体群生態学,数理モデル,バイオインフォマティクス,微生物群集,群集・生態系機能