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JS17-3:微生物群集のレジリエンスを理解するための数理生態学:基礎と応用
国立環境研究所, 生物生態系環境研究センター
レジリエンスは生物群集や生態系が撹乱を受けた場合の復元力や復元可能性を表す言葉である。レジリエンスが低い生態系は高い生態系と比べて、小さな撹乱に対しても容易に元来の状態を変えてしまう。このような考え方は、生物群集や生態系が複数の安定な状態(多重安定性)を持つことを暗に仮定している。多重安定な系は、一度異なる状態へと変化した場合、何らかの環境の変化や人為的な操作なくしては元の状態を復元することができない。例えば、湖沼におけるアオコの発生メカニズムは、このような多重安定性と関係している可能性がある。
これまで生態学では、主に1種または少数種からなる個体群においてレジリエンスの概念が整理されてきた。一方で、微生物群集は非常に多くの種からなる。このような多数種からなる系のレジリエンスは、少数種からなる系の研究だけで十分に理解できるわけではない。
本講演では、少数種からなる生物群集で多重安定性が生じるメカニズムから出発し、そこで得られる知見が多数種の場合ではどのように違ってくるのかを概観する。その上で、微生物生態系の安定性やその移り変わりを捉えるために必要な視点について議論したい。
keywords:レジリエンス,多重安定性,生態系