JS10-4:インド洋酸素極小層の表層堆積物中の微生物相と有機物消費過程
海洋研究開発機構
インド洋北東部では、水塊中の溶存酸素濃度が0.4_Mを下回るほどの顕著な酸素極小層が発達している。その影響下にある堆積物表層および堆積物中の生物は、底層水の溶存酸素濃度によってその分布や代謝に大きな制約を受けていると考えられる。我々は、酸素極小層内の酸素濃度の勾配と、堆積物中の微生物相・有機物消費過程の関係を探るため、堆積物中の微生物群集構造解析および海底現場での培養実験を行った。試料採取および現場実験は、底層水の酸素濃度の異なる酸素極小層内の3地点で行い、間隙水の栄養塩濃度、有機物濃度、微生物の多様性および定量解析、そしてメタゲノム解析を行った。その結果、底層水の酸素濃度に応じ、硝化菌やアナモックスなどの分布に大きな違いが見られた。また、海底に同位体標識した藻類を散布し、その無機化過程を栄養塩濃度の変化から追跡したところ、微生物分類群の組成に応じて、藻類由来の無機栄養塩の濃度変化が異なる傾向が見られた。これらの結果は、酸素極小層内でも底層水のわずかな酸素濃度の違いが微生物相に影響を及ぼし、その結果沈降有機物に由来する窒素循環にも違いを生み出していることを示す。
keywords:酸素極小層,微生物相,有機物消費,窒素循環
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