JS22-4:昆虫寄生菌Ophiocordycipitaceae科の多様性と病原性
(独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
Cordyceps sensu lato (以下、s.l.)(Ascomycota, Hypocreales) は、昆虫寄生性糸状菌の中で属・種数ともに最も多い。2007年Sungらにより再分類が行われ、旧Cordycepsは3科5属に分割された。これらがアナモルフ15属と関連する。宿主となるのはクモ・ダニを含む節足動物10目に及び、一部は他菌や植物の種子にも寄生する。3科のうちOphiocordycipitaceaeは生育が非常に遅い。宿主に対する特異性が高く、微生物農薬として期待されるため、筆者は本菌群の宿主範囲の調査と分類学の課題解決に取り組んでいる。
この科のPolycephalomyces属は、セミ幼虫や朽ち木中のコウチュウ目に寄生するが、他のCordyceps s.l.から二次的に生じる例も散見される。ボクトウガ科幼虫に寄生するOphiocordyceps arborescensの結実部から、本来、朽ち木に棲むコウチュウ目の幼虫に寄生するP. paracuboideusが分離された。この標本の宿主虫体、子実体の柄、結実部からDNAを抽出し、クローニングしたrDNA ITS領域を解読すると、虫体の部位から第三の種P. ramosusの配列が検出された。P. ramosusは他のCordyceps s.l.の子実体の上に二次的に発生し、分生子柄束が白〜クリーム色で先端が膨らんで球形になる形態的特徴的がある。日本産のPolycephalomyces属14系統の宿主範囲を整理すると、8系統は他のCordyceps s.l.への重複寄生性を有していた。
18S、28S rDNA、RNAポリメラーゼII遺伝子、伸長因子の複数遺伝子領域に基づくOphiocordycipitaceae科の系統関係は、宿主昆虫の系統とは相関がみられなかった。一方で、菌寄生とセミ幼虫への寄生性を示す菌群は、特異性の高いOphiocordyceps属と腐生的か多犯性のCordycipitaceae科の中間的な系統となるなど、菌の棲息場所と比較的高い関係があった。
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