JS5-2:水田生態系に生息する新規typeIメタン酸化細菌の分離と同定
名古屋大学大学院生命農学研究科
好気性のメタン酸化細菌は主としてγ(typeⅠ)およびα(typeⅡ)プロテオバクテリアに属する。水田には、これまで分離されてきたtypeⅡだけでなく培養可能なtypeⅠも生息することが培養法とFISH法により示されている。田面水および水稲根圏より得られた新規typeⅠ菌株の分類学的検討結果を紹介する。
田面水より分離したFw12E-Y株は0.9×1.7μmの短桿菌で運動性を有し、中温性・好中性、最適NaCl濃度は0〜0.1%であった。DNAのG+C含量は57.1 mol%、主要な脂肪酸、キノンはC16:1とC14:1、MQ-8であり、16S rRNA,pmoA,mxaF遺伝子の系統解析ではMethylomonas属に最も近縁であった。Methylomonas属の既存種との間の16S rRNA遺伝子配列の相同性は96%以下と低く、液体培地での培養性状やNaCl濃度耐性等の表現型は既存種とは異なった。以上より、Fw12E-Y株はMethylomonas属の新種であると考えられ、Methylomonas koyamaeを提案した。
水稲根圏土壌から分離したRS11D-Pr株は2.0〜4.0×1.5〜2.0μmの桿菌で運動性を有し、中温性・好中性、最適NaCl濃度は0〜0.2%であった。DNAのG+C含量は64.1 mol%、主要な脂肪酸、キノンはC16:1、C16:0とC14:0、MQ-8であり、pmoA とmmoX遺伝子の系統解析結果とともに、RS11D-Pr株がMethylococcaceae科に属することを示した。16S rRNA遺伝子の系統解析では、最近縁のMethyloparacoccus murrelliとの間の配列相同性は94.6%と低く、大型の細胞形態、中温性・好中性、NaCl濃度耐性等の表現型は既存の属とは異なった。以上より、RS11D-Pr株はMethylococcaceae科の新属新種であると考えられ、Methylomagnum ishizawaiを提案した。
これらの菌株以外にも、水田には既知種とは大きく異なる特徴を有するtypeIのメタン酸化細菌が生息していると予想され、さらに分離の試みを続けていく必要があると考えられた。
keywords:メタン酸化細菌,タイプI,水田生態系,田面水,水稲根圏,