JS9-3:ジャガイモ塊茎表皮に形成される細菌群集構造と塊茎の生育段階におけるその変化
鹿児島大農
ジャガイモそうか病は塊茎表皮に病斑を生じる土壌病害であり、その原因菌として数種のStreptomyces属放線菌が知られている。ジャガイモ塊茎の表皮には、そうか病菌以外にも様々な細菌種が定着しており、塊茎上の細菌間に生じる相互作用は病害発生程度にも影響を及ぼす可能性がある。すなわち、塊茎表皮の細菌群を制御することにより、そうか病の発生を抑制できる可能性が考えられる。そこで本研究では、そうか病防除技術の開発に資するため、ジャガイモ塊茎表皮に生息する細菌の群集構造を経時的に調査した。
方法:ジャガイモをそうか病未発生圃場にて栽培し、生育段階ごとの塊茎とその栽培土壌を経時的に採取し、細菌の群集構造を解析した。解析は、各サンプルから抽出したDNAを用いた16S rRNA遺伝子のアンプリコンシークエンスにて行った。表皮の群集構造解析では、植物DNAの混入による次世代シークエンス解析の効率低下を防ぐため、我々の開発したLNAを用いたPCR-クランプ技術をジャガイモ植物に最適化して実施した。
結果:ジャガイモ塊茎は、地下にできる茎(ストロン)の先端部分が肥大して形成される。ジャガイモ塊茎の生育段階による細菌群集構造の変化を調べた結果、ストロン表皮と塊茎表皮では細菌群集構造が大きく異なっていた。塊茎肥大初期(約2cm)から収穫時(10cm以上)の塊茎間では類似した細菌群集構造を示した。門レベルでは、ストロン、塊茎ともProteobacteria、Firmicutes、Bacteroidetes、Actinobacteria、TM7の5門で95%以上を占めていた。最も優占したProteobacteria門の細菌の存在比はストロン(46.9%)、塊茎(59.4%)であった。Firmicutes門の細菌はストロン(23%)では存在比が大きかったが、塊茎(4.3%)で減少し、そのほとんどがBacillus属の細菌であった。一方、Bacteroidetes門はストロン(12.6%)より塊茎(29.0%)で存在比が高く、多様な属で構成されていた。また、門レベルの未培養系統群であるTM7の細菌がストロン(4.4%)と塊茎(3.7%)に存在した。属レベルで見た場合、ストロンや塊茎においてのみ存在比の高い数種の細菌が認められ、特異的な細菌群が表皮に定着していることが示唆された。
keywords:細菌群集構造