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S31-05 : 地球温暖化と土壌微生物
Posted On 20 10月 2014
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東京大学大学院農学生命科学研究科
農耕地土壌は、温室効果ガスの一つでありオゾン層破壊作用も有する一酸化二窒素(N2O)ガスの大きな発生源である。肥料に含まれる窒素が土壌微生物による形態変化を受けてN2Oが生成する。土壌においてN2O生成や消去に関わる鍵微生物を特定・分離・解析することはN2O発生削減技術の基盤として重要である。
農耕地土壌のうち畑土壌からのN2O発生が著しい。有機質粒状肥料を土壌に施用した際のN2O発生原因微生物の特定を試みた。肥料を土壌に混合施用した際のN2O発生は主に細菌脱窒に由来していた。土壌のメタゲノム情報を参考に、菌株ゲノム情報から脱窒のnirK、nirSを幅広くカバーする新規プライマーを設計し、N2O発生土壌から抽出したmRNAを用いた解析を行って機能している脱窒細菌群を推定した。同じ土壌から分離した脱窒細菌のN2O /N2生成型を調べ、N2O生成原因脱窒菌を特定した。肥料を土壌に表面施用した際には主に糸状菌脱窒によりN2Oが発生した。土壌DNA解析と分離培養法から、土壌でN2O生成を実際に担っている糸状菌を特定した。
一方、水田からはN2Oがほとんど発生しない。これは水田土壌の高いN2生成型脱窒活性に由来すると考えられた。土壌DNA解析(Stable Isotope Probing、メタゲノム解析等)と分離培養法(Functional Single Cell分離法)から、長らくブラックボックスのままであった水田土壌の脱窒菌群を明らかにした。
網羅的解析から鍵微生物へたどりついた。鍵微生物とそのゲノム情報を利用して窒素肥料の削減とN2O発生削減の両効果を有する微生物資材の開発を試みている。
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