S31-06 : 土壌は気候変動を増大させるか?:土壌から大地の微生物学へ
Posted On 20 10月 2014
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茨城大学農学部
“Will soil amplify climate change?”(Powlson, 2005)の議論が始まり、“土壌炭素分解の温度感受性と気候変動へのフィードバック”(Davidson & Janssens, 2006)の論考では、土壌有機物の多様性と分解の温度感受性、そして環境制約との関係が指摘された。すなわち、土壌有機物の性状だけでなく、存在状態や水分条件等が有機物分解の見かけ上の温度感受性に関係するのである。それ以前に、Beareら(1994)は土壌の耐水性団粒を壊して発生する無機化CO2量から、土壌団粒内の微生物による消費から隔離されている有機物量を推定し、その量は通常耕起畑地よりも不耕起畑地で多いことを示した。こうして、農法が土壌構造の改変を介して気候変動につながる図式が見えてきた。土壌構造-微生物-有機物の関係で、前2者の関係に着目した服部ら(1967, 1990, 2000)は微生物の微視的分布(ミクロ団粒内部と外部)と環境変化に対する微生物応答の違いや細菌-原生動物間の捕食関係を示した。その後、rRNA遺伝子解析の時代に入り、例えば、Sessitschら(2001)は施肥条件の異なる長期試験圃場の土壌をsand、silt、clayに分画してT-RFLP解析し、土壌細菌の群集組成は施肥条件よりも粒子サイズの影響が大きいことを示した。現在、メタゲノミクスが土壌微生物の微視的分布と群集構造の関係をさらに解明する状況になっている。もう一つの関係(土壌構造-有機物)の研究展開と連動することで、農法-土壌-地球環境のつながりに関する更なる理解が期待される。
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