Previous Story
S13-05 : 液状きゅう肥長期連用畑地土壌の窒素循環と微生物生態系
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1茨城大学大学院 農学研究科, 2東京大学 大気海洋研究所, 3海洋研究開発機構 海洋•極限環境生物圏領域, 4九州沖縄農業研究センター 畑作研究領域, 5茨城大学 農学部
農業での窒素施肥は温室効果ガス(N2O)の発生や地下水の硝酸汚染等の環境問題につながるため、窒素の動態に関わる土壌微生物生態系の理解は極めて重要といえる。窒素循環では細菌が主役になると理解されてきたが、近年、アンモニア酸化アーキアや脱窒糸状菌が発見され、窒素循環を担う微生物の多様性がわかってきた。本研究では、牛糞液状きゅう肥(スラリー)を長期間連用している畑地を対象とし、スラリー連用が土壌の微生物生態系と硝化や脱窒に与える影響ついて解析した。 供試土壌は、九州沖縄農業研究センター・都城研究拠点内の長期スラリー連用試験区(120 t/ha、300 t/ha、600 t/ha)及び裸地区(0 t/ha)から採取し、メタゲノム解析、N2O生成活性測定、N2O生成活性をもつ糸状菌株の分離を行った。 メタゲノム解析とアンモニア酸化(amoA)遺伝子の定量PCR解析では、スラリー施用量の増加にともない、土壌中のアーキア全体の割合が減少し、細菌のamoA遺伝子量に対するアーキアのamoA遺伝子量の比を計算した場合でもスラリー施用量に依存して減少した。抗生物質を用いた土壌のin vitro脱窒活性測定では、細菌由来の活性に匹敵する糸状菌由来の活性が検出され、その活性はスラリー施用量の増加に伴い上昇した。高いN2O生成活性を有する糸状菌分離株はすべてAscomycota門であり、スラリー施用量増加によってAscomycota門の割合が増加することから、本試験圃場ではAsocomycota門の糸状菌がN2O発生に関わることが推察された。
keywords:soil microorganism,nitrogen cycle,metagenomiscs,fungal denitrification