PH-126:嫌気環境下で見出される未培養門細菌のゲノム再構成とその機能解明
1産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門, 2Australian Centre for Ecogenomics, The University of Queensland, 3クボタ化水株式会社
環境中には未培養微生物により構成される高次分類群(未培養細菌門、綱など)が多数存在する。未培養細菌門は少なくても50門以上存在することが示されており、その機能解明は微生物学の重要なフロンティアの一つである。それら未培養細菌門の多くは嫌気環境下で見出されることが多いが、その培養は困難であり、それらのゲノム情報もまだ未整備のまま残されている。最近の情報生物学の技術的進展により、メタゲノム情報から複合微生物群を構成する個々の微生物集団のゲノム(ポピュレーションゲノム)を抽出、再構築することが容易になりつつある。最新の情報生物学技術を利用することで、特定の微生物群集に優占して存在する微生物種だけでなく、優占度の低い(1%以下の存在率)微生物種の全ゲノム配列を高い精度で再構築することが可能になっている。本研究では、まだその存在以外何も知られていない未培養門細菌群の持つゲノム情報を取得するため、嫌気性廃水処理プロセスの複合微生物群をモデル嫌気生態系として利用しそのメタゲノム情報を取得した。その後、個々のポピュレーションゲノムを抽出するための情報生物学技術であるdifferential coverage binning法を適用し、複数種の未培養細菌門を代表するドラフトゲノムの取得を試みた。59 Gbのメタゲノムデータを元にポピュレーションゲノムの抽出を実施した結果、14 種のアーキア、49種の細菌の完全長に近いゲノム情報が取得できた。これらの63種のゲノム情報でメタゲノムリード情報の60%をカバーしていた。そのうち19種のゲノムは未培養門に属すると推定された。それらのゲノムには、AC1, OD1, TM6, OP3, WS1, WS3, WS6などの未培養細菌門に属すると推定された。それらのゲノム情報を元に、未培養門細菌の機能推定とその培養のための戦略を立案した。
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