PD-052:Gemmatimonas aurantiacaによる亜酸化窒素(N2O)の還元
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【背景・目的】亜酸化窒素(N2O)ガスが地球温暖化に与える効果は二酸化炭素ガスの300倍であり,オゾン層破壊に強く寄与することも明らかとなってきた。こうした背景からN2Oを消費し、無害化する微生物に注目が集まっている。Gemmatimonas aurantiacaは2003年に下水処理場活性汚泥から分離された細菌であり、Gemmatimonadetes門を代表する細菌である。環境試料に対する16S rRNA遺伝子解析から、本細菌は土壌環境に数%程度の存在割合で普遍的に存在することが明らかとなっている(1)。本細菌が環境中でどのように生育しているのかは知見がないものの、G. aurantiacaのゲノム配列から代謝ポテンシャルを推測することは可能である。G. aurantiacaのゲノムには亜酸化窒素還元酵素をコードする遺伝子(nosZ)が存在しており、これはG. aurantiacaがN2O還元細菌であることを示唆している。本研究ではG. aurantiacaのN2O還元能を調査した。
【方法・結果】G. aurantiacaを密閉バイアルへ分注し、N2Oガスを注入した後、N2Oの消費を調べた。G. aurantiacaは経時的にN2Oを消費し、N2O消費活性は3.5 nmol-N mg-protein-1 min-1だった。本実験を15-15N2Oガスを用いて追試した結果、15-15N2Oが15-15N2へ還元されていることを確かめた。N2O添加に対するnosZ mRNAの応答をRT-PCR法で定量した結果、N2O還元条件下では転写量が100倍程度増大することが明らかとなった。G. aurantiacaがN2O還元細菌であることが確かめられたため、本細菌がN2Oを用いて増殖しえることを連続培養試験で検証した。N2Oガス(1,000 ppm)を連続的に通気しながらG. aurantiacaを培養した結果、20日培養後から増殖が目視で確認でき、45日培養後にはOD600が0.04に達した。現在、G. aurantiacaが自然環境下でN2Oの消費に関与しているのかを明らかにするため、至適温度域、環境試料からのnosZ mRNAの検出を試みている。
1)DeBruyn et al., 2011, Appl. Env. Microbiol., 77:6295-6300.
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