PK-193:濾過フィルターのポアサイズの違いが水圏試料の微生物群集構造解析に与える影響
(株)テクノスルガ・ラボ
【目的】近年、次世代シーケンサーによる解析技術の発展により解析可能な塩基配列数が飛躍的に増加し、群集構造を構成するメジャーな菌種だけでなくマイナーな菌種の解析も可能となった。海水、地下水、河川水などの水圏試料を対象に群集構造解析を行う場合、一般的にポアサイズ0.2 μm〜0.65 μmのフィルターを用いて対象試料を濾過し、DNA抽出を行うことが多い。一方で、水圏試料中には、ポアサイズ0.2 μmのフィルターを通過するUltramicrobacteriaの存在が知られているが、水圏試料を濾過するためのフィルターのポアサイズが群集構造解析結果に及ぼす影響についての知見はほとんどない。そこで、本研究では、濾過フィルターのポアサイズの違いが水圏試料の微生物群集構造解析に与える影響について検討した。【方法】静岡県駿河湾深層水取水供給施設にて水深397mの海洋深層水を採取した。海洋深層水500mLを0.1、0.22、0.3、0.45、0.65および0.8 μmのポアサイズのメンブレンフィルターを用いて、それぞれTriplicateで濾過した。濾過後のフィルターから直接DNAを抽出し、原核生物ユニバーサルプライマー(Pro341F/Pro805R) を用いて次世代シーケンス解析を行い群集構造解析に及ぼす影響を評価した。また、全細菌および全古細菌を対象としたリアルタイムPCRにより、16S rRNA遺伝子コピー数を評価した。【結果および考察】全細菌を対象としたリアルタイムPCRの結果、ポアサイズ0.1 μmと比較してポアサイズ0.45 μm以上の場合、16S rRNA遺伝子コピー数が有意に低下した。また、全古細菌を対象とした場合、0.3 μm以上でそのコピー数が有意に低下した。次世代シーケンス解析の結果においても濾過フィルターのポアサイズの違いにより、細菌および古細菌の一部の分類群で検出割合が有意に低下した。さらにクラスター解析の結果から0.45 μm以上のポアサイズのフィルターを使用した場合、0.3 μm以下のポアサイズのフィルターを使用した場合とは異なるクラスターを形成し、加えて解析結果にバラつきが出やすく、再現性が低くなることが示唆された。以上の結果から、水圏試料濾過に使用するフィルターのポアサイズにより試料中の微生物群集構造解析結果に影響を及ぼす可能性が示唆された。
keywords:メンブレンフィルター,ポアサイズ,群集構造解析,次世代シーケンス解析