PF-082:大気バイオエアロゾルの定量分析にむけたDAPI染色による蛍光顕微鏡観察法の検証
1金大・理工, 2滋賀県立大学
中国大陸の砂漠地帯で巻き上がった鉱物粒子は、偏西風にのって拡散し、黄砂を引き起こす。黄砂発生時には、鉱物粒子のみならず、細菌、カビ、花粉、動植物の細胞断片等の生物由来の有機物粒子「バイオエアロゾル」も風送され、そのヒト健康被害や微生物生態系への影響に学術的関心が集まる。また、氷核活性を有する大気微生物は、雲形成過程に関与し、気候変動の因子として注目される。しかし、大気バイオエアロゾルの定量技術は確立しておらず、特に黄砂とともに風送されるバイオエアロゾルについて、黄砂発生源と飛来地上空における定量データは乏しい。
そこで、黄砂発生源であるゴビ砂漠(ダランザドガド)において、砂塵が発生した2015年3月25日から27日にかけて継時的に大気粒子試料を計4回採取した。また、黄砂飛来地の能登半島(羽咋市)において、2015年3月の偏西風が卓越した際(黄砂飛来時)に、ヘリコプターを使って高度1200mの大気粒子試料を計6回採取した。大気粒子は、フィルターホルダーに装着した孔径0.2μmポリカーボネート製フィルター上に捕集した。
捕集調査の後、フィルターホルダーに4’,6-diamidino-2-phenylidole(DAPI)を注ぎ、大気粒子を染色した後、落射型蛍光顕微鏡を用いて観察し、粒子数を計数した。大気粒子は「黄色粒子(有機物)」「白色粒子(鉱物)」「細菌様粒子」に分けて観察され、計数値から粒子濃度を求めた。その結果、黄砂発生源と黄砂時の飛来地上空において、細菌様粒子濃度は105-107particles/m3で推移したのに対し、非黄砂時の能登半島上空では104-105particles/m3と細菌様粒子濃度が低かった。また、ダランザドガドで砂塵が発生した数日後に、能登半島でも粒子濃度が増加した。これらの結果は、黄砂によるバイオエアロゾルの流入を示唆する。
一方、フィルターから洗い落とした大気粒子を、顕微鏡観察や遺伝子解析等に分けて使用することで、試料を効率的に解析できる。そこで、大気試料(2015年6月に金沢大学にて採取)を用いてフィルターからの洗液中粒子とフィルター上の残存粒子の計数値を比べ、洗浄による粒子回収率を検討した。その結果、60%-80%の回収率が認められ、今後、次世代シーケンス解析で風等送細菌群の群集構造を解明したい。
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