OK-08:1細胞PCRによる16S rRNA遺伝子と機能遺伝子の結合技術の開発とその関係の網羅的解析
産総研
【背景・目的】微生物の分子系統分類には16S rRNA遺伝子配列が広く利用されているが,その系統分類だけでは生理学的機能の推定は困難である。特定の生理学的機能を有する微生物群の遺伝的多様性を評価するため,これまでその機能に関連する遺伝子 (機能遺伝子) に着目した解析が実施されてきたが,検出される機能遺伝子を持つ微生物群 (特に未培養微生物) の系統分類学的位置の推定が難しい場合が多い。本研究では,未培養微生物を含む環境中微生物群の16S rRNA遺伝子と特定の機能遺伝子の関連を解析するため,1細胞PCR (エマルジョンPCR) 技術と次世代シークエンシング技術を融合し,両遺伝子間の関連を網羅的に解析する技術の開発を実施した。【方法・結果】本検討では,はじめにモデル微生物(メタン酸化細菌)を用いて,エマルジョン内で純粋培養菌体から16S rRNA遺伝子と機能遺伝子(メタン酸化酵素遺伝子:pmoA遺伝子)の結合PCRを行った。両遺伝子の結合を行うため,それぞれの遺伝子領域の片側のプライマー5’末端に相補的な人工配列を付加した。そのPCRの結果,モデル微生物由来の16S rRNA遺伝子と機能遺伝子が結合したDNA断片が形成されていることが判明した。この結果より,細胞からDNA抽出を行うことなくエマルジョン内で2種遺伝子の結合PCRが行えることがわかった。次に,正しい組み合わせで両遺伝子が結合できるか確認するために,両遺伝子配列が大きく異なる3種類のメタン酸化細菌細胞を等濃度で混合し,混合菌体の濃度を変化させてエマルジョンPCRを行った。上記の結合PCRを実施後,PCR断片の網羅的シークエンシングをMiSeqで行い,16S rRNA遺伝子側とpmoA遺伝子側をペアエンドで解析した。得られた16S rRNA遺伝子側とpmoA遺伝子側のリードの大部分は,想定した遺伝子断片の塩基配列を有していた。得られたリードを3種類のメタン酸化細菌の16S rRNA遺伝子配列とpmoA遺伝子配列にマッピングさせたところ,そのペアエンドの約80 %が正しい組み合わせで結合しており,残りは異なるペアであった。1細胞からの結合PCRおよびその解析が実施できており,環境サンプルへ適用できる可能性を見出した。
keywords:emulsion PCR,next generation sequencing,gene fusion