PH-124:大腸菌プラスミドpSC101の複製と安定分配に関する解析
茨城大学農学部
プラスミドは細胞内で染色体とは独立して複製し、安定的に娘細胞へと分配される。プラスミド安定分配システムは二つに大別され、一つは2つのタンパク質とセントロメア様領域から構成されるtrans-cis複合分配システム、もう一つはプラスミド上の非コードDNA領域のみに依存するcis分配システムである。
我々は多環芳香族炭化水素分解能に優れたSphingobium yanoikuyaeからpYAN-1およびpYAN-2を分離同定し、これらのプラスミドの安定性はシス型の安定分配機構であることを明らかにしている。シス型の安定分配機構で最も研究されているのは大腸菌を宿主とするプラスミドpSC101である。このプラスミドの安定性はpar-siteに依存し、同部位へのDNA gyraseの結合が必須である。当研究室にてpar-siteを持たない不安定なpSC101は上記両プラスミド由来の特定のDNA領域parにより安定化されることを報告している。しかしながら、pYAN-1, pYAN-2のpar領域には、DNA gyraseが結合しないことから、pYAN-1およびpYAN-2の安定分配機構はpSC101が保持する本来の機構とは異なることが示唆された。一方、pSC101のpar領域を欠失させたプラスミドはコピー数が低下したが、pYAN-1およびpYAN-2のpar領域の挿入によって安定化したプラスミドpSC101のコピー数に変化は無かった。以上のことから、両プラスミド由来のpar領域によるプラスミドpSC101の安定化は低コピー数状態で起こる新たな機構であることが示唆された。
keywords:プラスミド,Sphingobium ,stability distribution