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S12-02 : 植物-微生物共生における共通性と多様性:根粒菌と菌根菌
Posted On 20 10月 2014
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1千葉大学・大学院園芸学研究科
マメ科植物には根粒菌とアーバスキュラー菌根菌(AM菌)が二重に共生している。両共生菌は宿主から光合成炭素の供給を受けながら、根粒菌は固定した窒素を宿主へ供給し、AM菌はリン酸等の供給と宿主の環境ストレス耐性や病害抵抗性を高める働きをしている。菌根共生系は約4億年前に始まり、根粒共生系は約6,500万年前に菌根共生系を基礎にして構築されたと考えられている。これまでにマメ科モデル植物を用いた解析によって、共生菌からのシグナルを宿主が受容する初期伝達経路(CSP)に両共生系の共通基盤があることが知られている。しかしマメ科植物における両共生系間の共通性と特異性の全体像は未だ明らかになっていない。そこで演者らはDNAアレイを用いてダイズの根粒・菌根共生系で発現する宿主遺伝子のトランスクリプトーム解析を行なったので、今回はその結果について述べたい。
ダイズ(品種エンレイ)に根粒菌(B. japonicum)またはAM菌(G. rosea)を単独または二重に接種後、温室内で6週間栽培した。ダイズ根からRNAを抽出しDNAマイクロアレイ(Agilent社)を用いて宿主遺伝子の発現解析を行った。根粒菌接種によって187個、AM菌接種によって441個の遺伝子が発現上昇した。両共生菌に共通して発現上昇した遺伝子は34個であった。また二重接種によって新たに56個の遺伝子が発現上昇した。以上の結果から、ダイズの根粒・菌根共生系では共通して発現する遺伝子よりもそれぞれの共生系に特異的に発現する遺伝子が多いことがわかった。講演では両共生系の成立と機能を考える上で興味深い遺伝子について詳しく紹介したい。
keywords:共生関係,根粒菌,アーバスキュラー菌根菌,ダイズ,DNAマイクロアレイ