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O22-04 : バンコク周辺の水圏環境における薬剤耐性菌とその耐性遺伝子の解析
Posted On 20 10月 2014
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1酪農学園大・院・獣医, 2愛媛大・沿岸研セ, 3東農工大・院・農 環境資源
【緒論】河川等の水圏環境は抗菌性物質を含む排水に曝露されており、薬剤耐性菌や耐性遺伝子が選択・維持されやすい条件にある。また、熱帯アジアでは洪水等による水圏環境の撹乱も生じやすく、水系細菌と病原性細菌との接触の機会が多いことが予想される。そこで、異なる水圏環境における細菌の薬剤耐性状況を明らかにするとともに、水圏環境の耐性菌の存在が医療上のリスクになるかを評価するため、複数の河川から細菌を分離し、その性状を調査した。【方法】タイ、バンコク市内のチャオプラヤ川(7地点)、市内の運河(5地点)及びバンコク郊外のターチン川(3地点)で採取した水からDHL培地を用いて細菌を分離し、抗菌薬感受性試験および耐性遺伝子の検出を行った。水系細菌が起源とされるプラスミド性キノロン耐性遺伝子のqnrVC4を保有する株については、大腸菌への接合伝達試験を実施した。【結果及び考察】合計68株の細菌が分離された(Escherichia coli 2株、Enterobacter spp. 2株、Pantoea sp. 1株、Aeromonas spp. 63株)。チャオプラヤ川由来の38株は他の30株と比べてテトラサイクリン(TC)耐性率およびTC耐性遺伝子保有率が有意に高かった。これは本河川が他の水系に比べて流域が広く、TC等の抗菌性物質を含んだ排水の流入する機会が多いことによるものと考えられた。qnrVC4はAeromonas 1株から検出され、このプラスミドが3.5×10-7の頻度で大腸菌に伝達してキノロン感受性を低下させたことから、水系細菌がもつ耐性遺伝子が病原菌へと伝達する可能性が示された。
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