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O22-02 : 生物活性阻害剤を用いて海水中のタンパク質分解酵素活性の起源を探る
Posted On 20 10月 2014
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1横浜国大・院・工, 2筑波大・生命環境, 3愛媛大・沿岸研セ
海水中の有機物分解酵素活性は原核生物の細胞外酵素によるものとみなされるが、必ずしも細菌由来であるかどうかはわかっていない。本研究では、天然海水に、エリスロマイシン(細菌を阻害)を添加(E)、ジフテリアトキシン(真核生物とアーキアを阻害)を添加(D)、その両方を添加(ED)、どちらも添加なし(C)の各系を作成し、各系内のプロテアーゼ(アミノペプチダーゼ、トリプシン型、キモトリプシン型)活性の変化を追跡することで、海水中のプロテアーゼの起源生物を探ることを試みた。
採水直後の海水では、トリプシン型活性が最も高くそのうちのかなりの割合が溶存態画分に含まれていた。Cでは、Day1までにトリプシン型とキモトリプシン型の活性は低下し、アミノペプチダーゼ活性が上昇した。Eでは、Day1でのアミノペプチダーゼ活性上昇は見られず、いずれの酵素活性もやや低下した。これらから、Cでのアミノペプチダーゼ活性上昇は細菌によるものと考えられる。Dでは、アミノペプチダーゼ活性が非常に大きく上昇し、トリプシン型、キモトリプシン型活性も上昇した。EDでは、Day1までの上昇は見られずDay2より上昇した。これらより、DおよびEDでの活性の上昇は細菌の増殖または活性化によるものと考えられる。ジフテリアトキシンはタンパク質であるのでプロテアーゼ活性が特に増大した可能性がある。
以上の結果から、天然海水中で検出されるプロテアーゼ活性のうち、アミノペプチダーゼについては細菌群集に直接由来するものが多く、トリプシン型・キモトリプシン型活性については少なくとも一部は細菌由来であるが他の生物の寄与も含まれることが示唆された。
keywords:Organic matter degradation,Extracellular hydrolytic enzymes,Microbial Loop,Protease activity in seawater,