Previous Story
O22-05 : 水圏環境からの薬剤耐性遺伝子伝播におけるハエの役割
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1酪農学園大・獣医, 2東農工大・農, 3愛媛大・沿岸研セ
【目的】水圏環境における薬剤耐性菌の存在及び伝播は人の健康に影響を及ぼす懸念があるが、水圏から人間環境への伝播経路は不明である。東南アジアに位置するタイは、人間生活と河川が密接な関係にある。しかし、河川から人への耐性菌ベクターの存在は明らかでない。近年、農場からの耐性菌ベクターとしてのハエの重要性が明らかになった。そこで、水圏環境からの耐性菌ベクターとしてもハエが機能するのではないか、という仮説のもと、医療及び獣医療で問題となっているセファロスポリン(CTX)耐性に着目し、タイの河川周辺で捕獲したハエから大腸菌を分離し、その性状を調べた。【材料及び方法】河川周辺8か所において捕獲した計122匹のハエからCTX耐性大腸菌の分離を行い、βラクタマーゼ遺伝子(bla)検出、MLST型別、レプリコン型別を行った。また、ハエの採材地点の河川材料からbla遺伝子の検出を行った。【結果及び考察】ハエから31株(5か所)のCTX耐性大腸菌が分離された。25株からbla遺伝子(CTX-M55,8株;CTX-M14,8株;CMY-2,6株;CTX-M15,1株)が同定された。これらの株のMLST型は多様性を示し、bla遺伝子ごとに同一のレプリコン型を示したことから、これら遺伝子はclonalに拡散したのではなくプラスミドにより拡散した可能性が高い。また、2か所の河川材料からbla遺伝子が検出された。CTX-M55、CTX-M14はそれぞれタイ、日本の医療施設、CMY-2は動物から頻繁に分離される。以上のことから、ハエを介して薬剤耐性プラスミドが医療、獣医療、水圏環境に拡散していることが示唆された。
keywords:水圏環境,薬剤耐性,ハエ,東南アジア,