P16-06 : 細菌群集構造に原生動物の捕食と細胞外分泌物が及ぼす影響
Posted On 20 10月 2014
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1東京農工大・院・農・物質循環環境・環境微生物, 2東京農工大・院・農・物質循環環境・環境生物
【目的】細菌の増殖や代謝に,原生動物が細胞外に分泌する物質が及ぼす例が近年報告されている。本研究では細菌群集構造に原生動物の細胞外分泌物が影響を及ぼすと仮説をたて,これを検証することを目的とした。【方法】中央を孔径0.1μmのメンブレンフィルターで隔てた二槽培養器を用いた。細菌や原生動物はこのメンブレンフィルターを通過しないが,原生動物の細胞外分泌物は通過する。二槽培養器の一方の槽に孔径0.45μmのフィルターでろ過して原生動物を取り除いた環境試水を接種し,他方の槽にはモデル原生動物として無菌のセン毛虫Tetrahymena thermophilaを接種した(隔離培養系)。対照として細菌群集とT.thermophilaの混合培養系及び細菌群集のみの培養系をもうけた。暗所25℃にて緩やかに振とうしながら培養し,培養液を定期的に採取した。培養液中の細菌DNAを抽出した後,PCRにより16S rDNA領域を増幅したのち,DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法により,増幅したDNAを塩基配列の違いに基づいて分離し,細菌群集構造を解析した。【結果と考察】隔離培養系及び混合培養系において細菌群集はフロックが形成された。一方,細菌群集のみの培養系においてはフロックは形成されなかった。したがって原生動物の細胞外分泌物は細菌のフロック形成を引き起こすと考えられた。PCR-DGGE法にて細菌群集構造を解析した結果,細菌群集の多様性は,混合培養系>細菌群集のみの培養系>隔離培養系の順に低くなった。このことから細菌種の中には原生動物の細胞外分泌物によって生育が阻害させる種が存在する可能性が示された。
keywords:Predation,Secretion,PCR – DGGE,Bacterial Community Structure,