PA-022:印旛沼における湖沼微生物ループを構成する細菌および原生生物の推定
1東大院・工、都市工学専攻, 2東大院・工、附属水環境制御研究センター
微生物ループは溶存有機物を起点とする水圏食物連鎖である。しかし、ループを構成する細菌や原生生物の詳細については不明な点が多い。本研究では、水道水源としても利用されている千葉県印旛沼を対象として、微生物ループに関わる細菌や原生生物の推定を試みた。
2014 年10 月に印旛沼の表層水を採水し、孔径10 _mでろ過したもの(湖水10)、湖水10を孔径0.8 _mでろ過したもの(湖水0.8)、無菌状態にするため湖水10を孔径0.2 _mでろ過し加熱滅菌したもの(無菌湖水)をそれぞれ作成した。初期全菌数が湖水の1/10になるように無菌湖水に湖水10 (Run A)、湖水0.8(Run B)をそれぞれ植種し、19℃で暗所培養した。
Run Aでは全菌数が約5×106 cells/mLまで増加した後に1×106 cells/mLまで減少した。Run BではRun Aと同程度まで全菌数が増加したが、その後の減少は見られなかった。このことから、Run Aでは原生生物による捕食が全菌数の減少に寄与していたと推察された。
細菌群集と真核微生物群集の組成を、それぞれ16S rRNA遺伝子、18S rRNA 遺伝子を標的としたアンプリコンシーケンシングにより解析した。16S rRNA遺伝子の解析結果では、Run A、Run Bともに培養開始時から全菌数増加後にかけて、Burkholderialesの存在比率が20%から54〜57%まで顕著に増加していた。また、Run Aでは、全菌数の減少に伴ってBurkholderialesの存在比率が35%まで減少した。このことより、Burkholderialesは他の細菌よりも比増殖速度が大きい一方で捕食されやすく、微生物ループで重要な役割を担っていることが推察された。Run Aを対象とした18S rRNA遺伝子の解析結果では、培養開始時から全菌数増加後にかけてStramenopilesの存在比率が32%から65%まで増加し、全菌数減少後もその比率は変化しなかった。また、Stramenopilesの中でも混合栄養性の原生生物として知られるOchromonasが優占しており、微生物ループの中で細菌を捕食していたことが推察された。
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