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P14-04 : 海底下のドーナツ:奇妙な形態変化しながら増殖する嫌気性細菌の菌学的特徴
Posted On 20 10月 2014
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1JAMSTEC, 2(株)マリンワーク・ジャパン, 3長岡技科大
海底下に生息する微生物の多くが未だ培養がなされたことがないため、その詳細な生理学的・遺伝学的な特徴はよく分かっていない。これまで海底下微生物を培養するために多くの試みがなされてきたが、重要な反応を担う微生物 (例えば、メタン生成や嫌気的メタン酸化等)や16S rRNA遺伝子に基づいた解析で示される優占種の培養は、試験管等を使う従来のバッチ式培養法では難しいことが知られていた。そこで我々はポリウレタンスポンジを微生物の固定化担体として用いる下降流懸垂型スポンジリアクターを用いて海底堆積物から微生物の集積培養および分離を行っている。その結果、現在までに多種多数な分離株を取得することに成功した。それら分離株の中でも、本研究発表ではスピロヘータ門に属する嫌気性の好冷性細菌MO-SPC2株の詳細な菌学的特徴について報告する。MO-SPC2株の16S rRNA遺伝子を決定後、分子系等解析を行った結果、スピロヘータ門の中のSphaerochaeta属細菌に比較的近縁であることが明らかとなった。本菌株の最も特徴的なことはその細胞形態である。顕微鏡観察の結果から、定常期ではほぼすべての細胞が球状であるが、対数増殖期には、球状→凹みのある球状→ドーナツのように真ん中に丸い穴を持つ球状→少し曲がった桿状→らせん状→連鎖した球状と細胞形態をドラスティックに変化させながら増殖していると推定した。特にドーナツ型の細胞形態は興味深く、我々が知りうる限りこのような細胞形態を示す原核生物の記載はない。本発表ではこの特徴的な細胞形態に加え、その他の菌学的特徴についても併せて報告する。
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