PE-071:ヨウ素酸化酵素の系統的多様性と環境分布
1千葉大学大学院 園芸学研究科, 2環境科学技術研究所 環境影響研究部, 3理化学研究所 バイオリソースセンター
【背景・目的】ヨウ化物イオン(I–)の分子状ヨウ素(I2)への酸化反応はヨウ素の循環において重要な反応である。我々はこれまでに、天然ガスかん水や海水から多数のヨウ素酸化細菌の分離に成功している。これらはRoseovarius mucosusに近縁なGroup Aと、Kordiimonadales目に属するGroup Bから構成されていた。Group Bに属するQ-1株の遺伝学的解析から、ヨウ素酸化酵素は新規なマルチ銅オキシダーゼIoxAと、機能未知タンパクIoxCからなる複合体であることが分かった。一方、これまでGroup Aに属するヨウ素酸化細菌や土壌由来のヨウ素酸化細菌について詳細な検討は行われてこなかった。そこで、本研究ではGroup Aに属するRoseovarius sp. A-2株のヨウ素酸化酵素について生化学的特質を明らかにすると共に、ゲノム中にioxAのホモログを有する土壌細菌Rhodanobacter denitrificansのヨウ素酸化能についても検討した。
【結果・考察】A-2株のヨウ素酸化酵素活性は、銅イオンの存在下で顕著に上昇した。またSDS-PAGEに供し、活性染色を行ったところ、2つのアイソザイム(IOE-I、IOE-II)が確認された。IOE-IIをLC-MS/MS解析に供したところ、Group Aに近縁なRoseovarius sp. 217の推定マルチ銅オキシダーゼおよび機能未知タンパクのペプチド配列と相同性を示した。これら2種類のタンパクはそれぞれ、Q-1株のIoxAおよびIoxCとも相同であったことから、Group B同様、Group Aもヨウ素酸化酵素はIoxAとIoxCの複合体を形成することが明らかになった。また、ioxAに特異的なPCRプライマーを設計し、ヨウ素酸化細菌11株のゲノムDNAからioxA断片を増幅した。これを基にIoxAの系統樹を作成したところ、Group AのIoxAはGroup BのIoxAと独立してクラスターを形成した。さらに、土壌細菌R. denitrificans JCM 17642をpH 5.0、銅イオン存在下で生育させたところ、ヨウ素酸化の表現型が確認された。よって、ヨウ素酸化酵素は海洋細菌のみならず、土壌細菌にも広く分布する可能性が示唆された。
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