PG-094:海底熱水水曜海山より分離した新規硫黄酸化細菌Thiogranum longum
1NBRC, NITE, 2AIST
伊豆小笠原島弧の水曜海山は、水深1300mのカルデラにおいて最大で300℃の熱水が噴出しており、その熱水に含まれる還元的な硫黄化合物を利用する硫黄酸化菌が多様に生息している環境である。2002年に実施した調査において、岩石コア試料を採取し、これを分離源としてGammaproteobacteriaに属する新規中温性硫黄酸化細菌を分離した。本研究では、本株の諸性状を検討するとともに、16S rRNA遺伝子に基づいたその系統的位置を検討した。併せて、Chromatiales目全体の系統関係について考察した。
採取した岩石コア試料から中温性硫黄酸化細菌gps52株を分離した。その形態的特徴として、培養初期に短桿菌であるが、培養終期において長桿菌となる。本株は偏性独立栄養性硫黄酸化細菌であり、二酸化炭素を唯一の炭素源として、電子受容体として酸素のみを利用して硫黄酸化によりエネルギーを獲得した。嫌気的な増殖及び光合成による増殖は観察できなかった。至適増殖条件は、32℃、pH6.5、3% NaClであった。16S rRNA遺伝子配列に基づいた系統解析から、gps52株はGammaproteobacteriaのChromatiales目に属し、本目のEctothiorhodospiraceae科と最も相同性が高く、本科に属する基準株と87.9-92.7%の相同性であった。以上の結果から、gps52株をEctothiorhodospiraceae科の新属新種として、Thiogranum longumという学名を提案し、受理された。一方で、Chromatiales目において近年提案されたGranulosicoccaceae科やThioalkalispiracae科とEcthothiorhodospiraceae科の16S rRNA遺伝子配列に基づいた境界は極めて曖昧であることから、さらなる解析が必要である。
keywords:Thiogranum loguum,sulfur-oxidizing,hydrothemal field