PN-225:黄砂飛来にともなう真菌群集構造およびAlternaria alternata現存量の変動
阪大院・薬
【目的】日本には毎年約400万トンの黄砂が飛来すると推測されており、これまでに当研究室では、黄砂とともに微生物が長距離移動していることを明らかにしている。しかし、飛来する微生物が下流域のヒトの健康に与える影響について、その詳細は不明である。真菌は、ヒトへの病原性を示すもの、アレルゲンとなりうるものが多数知られており、そのモニタリングは重要である。そこで、黄砂の飛来による生活環境の大気中の真菌群集構造およびAlternaria alternata現存量の変動を明らかにした。
【方法】2013年5月から2015年5月にかけて、大阪大学薬学部屋上にて大気バイオエアロゾルを採取した(黄砂飛来時10回、非飛来時30回)。その後DNA抽出を行い、rRNA遺伝子のITS領域を標的としたpyrosequencing法を用いて、真菌群集構造の解析を行った。また真菌群集のα多様性解析を行うためShannon指数を算出し、β多様性解析を行うために多次元尺度法を用いた。群集構造解析の結果を元にA. alternataに着目することを決め、18S rRNA遺伝子を標的とした定量的PCR法を用いてA. alternata現存量を測定した。
【結果と考察】真菌群集構造解析および多様性解析の結果、黄砂飛来時には非飛来時と比較して真菌種の多様性が低下し、また真菌群集の類似性が変化するなど、真菌群集が変化しており、その中でもA. alternataの割合が増加する可能性が示された。またA. alternata特異的な定量的PCRの結果、黄砂飛来時にその数が約3倍に増加することが分かった。以上より、黄砂の飛来によって生活環境の大気中の真菌群集が変化する可能性が示された。現在黄砂発生源により近く、黄砂の影響がより大きいと考えられる中国・北京において採取した試料についても同様の解析を行っており、本発表ではその結果も含めて考察する。本研究は、JSPS科研費(25281030)の助成により行った。
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