PG-099:湖堆積物および森林土壌からのoligotrophicなNitrosospira sp.の純粋分離
1中央大学理工学部, 2東京大学大学院農学生命科学研究科
【目的】 近年,自然環境でのアンモニア酸化におけるアンモニア古細菌(AOA)の貢献度の高さが注目され,AOAの純粋分離も相次いでいる。ただし,AOAが硝化の唯一の担い手ではなく,アンモニア酸化細菌(AOB)の役割も重要である。環境中では,oligotrophicなAOBが重要であると考えられているが,これをより深く研究するための純粋分離株が十分に存在し,維持されているとはいい難い。本研究では,堆積物および土壌を対象に,0.15 ~ 1.5 mMのNH4+を基質とする培地を用いてアンモニア酸化微生物(AOM)をMPN計数し,さらに純粋分離することを試みた。
【方法】 Suwaら(1994)のC基礎培地(pH 7.6)に,NH4+を75, 1.5, 0.15 mM添加し,それぞれCH, CL, CUL培地とした。これらを用いて,北浦の堆積物および中央大学多摩キャンパス内の森林土壌のAOMをMPN計数し,さらに限界希釈法で純粋分離した。Heterotrophの混在試験はSuwaら(1994)の方法で行った。Rotthauweら(1997)のAOBのamoAに特異的なプライマーで得たPCR産物の塩基配列(約440 bp)を決定し,系統解析した。
【結果】 堆積物試料のAOMのMPN計数値は,CH, CL, CUL培地のそれぞれについて, 0.92×104, 1.1×105, および0.49×106 cell/g soilであった。わずか0.15 mMのNH4+しか含まないCUL培地での計数値が最も高かった。CUL培地での優占株の分離には至らなかったが,CL培地での培養から,AOBを1株(HK1)純粋分離した。この株はamoAの塩基配列でNitrosospira sp. Nsp12と95%相同性のある株であった。同様に,土壌試料からもNitrosospira sp. Nsp2と95%相同性のある1株(HT1)を純粋分離した。これら2株ともCL培地では生育するが,CH培地に生育せず,oligotrophicな性質を持つと推定された。現在,HK1株とHT1株の詳細な系統解析および生理学的性質を検討中であるとともに,さらに別の菌株の純粋分離を進めている。
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