PJ-183:アブラムシの共生関連機能未知タンパク質と相互作用するタンパク質群の検出
1豊橋技術科学大学, 2理化学研究所
世界で約4,400種が知られているアブラムシは、腹部体腔内に「菌細胞(bacteriocyte)」と呼ばれる特殊な細胞群を持ち、その細胞質中に共生細菌ブフネラ(Candidatus Buchnera aphidicola, Gammaproteobacteria)を収納している。ブフネラは、虫の親から子へと1億年以上にわたって垂直感染のみにより受継がれており、その過程で多くの遺伝子を失っているため、菌細胞の外では増殖できない。一方アブラムシは、餌である植物師管液に乏しい栄養分の供給をブフネラに依存しており、ブフネラなしでは生存不能である。すなわち、アブラムシとブフネラは、両者を合わせてはじめてひとつの生物としてふるまうことのできる融合体を形成していると言える。我々はこの共生系の存立基盤の解明を目指してエンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)を用いた研究を進めており、菌細胞で特異的に高発現し、共生系の維持に重要な役割を果たしていると目されながら、具体的な機能の不明なアブラムシ遺伝子を多数見出している。これら遺伝子の産物のうち、現在我々が特に注目しているのが、Rare lipoprotein (Rlp)A4と、タンパク質Xである。前者は、細菌からアブラムシが水平転移により獲得した遺伝子に由来し、アブラムシの遺伝子発現機構に基づいて合成された後、ブフネラに輸送されることが明らかとなっている(Curr Biol, 2014)。後者は、ブフネラの分裂面にリング状の構造を形成するもので、ブフネラの分裂・増殖制御を担う宿主側の鍵分子である可能性が高い(未発表データ)。ミトコンドリアや葉緑体といったオルガネラの分裂は、ダイナミンなど複数の宿主タンパク質に制御されることが知られているが、タンパク質Xは、これらとはまったく起源が異なる。今回は、RlpA4とタンパク質Xの機能解明の端緒を開くため、これらと菌細胞内共生系において相互作用するタンパク質群の検出を試みた。N末端にヒスチジンタグを付加した両タンパク質を用いてプルダウンアッセイを行い、回収されたタンパク質群を質量分析により同定したので、その結果を報告する。
keywords:アブラムシ,ブフネラ,菌細胞,共生